小学校高学年のサッカー単元における守備から学び始める授業展開法(袋井・森地区教育研究会小学校保健体育部研修会)

開催日 2023年10月13日
受講生満足度
4.75(28)

サッカー単元は、小・中・高校のいずれにおいても実施され、運動好きの児童生徒にとっては好まれる傾向があります。しかし、足でボールを扱うのでゴール型球技の中では比較的難しい種目です。それゆえ、まったくボールを蹴ることのできない児童にとっては、苦痛の時間になってしまうリスクも潜んでいます。また、小学校の段階では、「お団子サッカー」や、「ゴールキーパー誰やる?問題」など、体育授業ならではの課題も抱えていることと思います。

そこで今回の研修会では、そのような課題を解決して、サッカー単元の授業を改善させられるような指導法や教材を紹介しました。

対象は、静岡県の袋井市、森町の小学校の先生方、約30名です。

研修内容

小学校高学年のサッカー単元で学習効果を高め、楽しい授業にするために、次の6つを紹介しました。

  1. 「キーパー誰やる?」問題を発生させない方法
  2. 運動が苦手な児童が活躍できるようにする守備学習
  3. お団子サッカー解消のコツはポジション学習
  4. ボール操作学習はトラップ・パス・ドリブルから
  5. サッカーの授業で役立つ手作り教具
  6. 単元終盤は試合がしたい!リーグ戦を盛り上げる方法

徐研究室が開催する体育授業の研修会は、ほとんどが実技を通して理論を習得していただく形式です。今回も先生方に「小学校6年生に戻ったつもり」で授業(研修会)を受けていただきました。

さらに、今回は研究室で開発中の「体育の学習ノート」を初披露しました。これは、学習内容と学習記録、評価用ポートフォリオの三機能が一つになった授業用小冊子で、これさえあればどんな先生でもサッカー単元の授業ができてしまう優れもの(を目指して開発している教材)です。

現場の先生方に初披露した「体育の学習ノート(小学校高学年サッカー単元版)」は、スモールステップによる学習内容が文字とイラストで掲載され、そのすべてに児童の習熟段階を記録可能。単元中は指導書&ノートとして使用し、単元が終わったら評価材料になります。

「キーパー誰やる?」問題を発生させない方法

サッカーに限らずゴール型球技の授業でよく発生するのが、試合の時に「キーパー誰やる?」でもめてしまうことです。「僕やるよ!」とすんなり決まることもありますが、最終的にはじゃんけんで決めたり、無理やりやらされたりすることも少なくありません。キーパーを担当するだけならまだよいのですが、失点して仲間から文句を言われたりしたらその時点で「サッカーの授業もういや」となってしまいます。

なぜキーパーをやりたがる児童が少ないのかというと、キーパーについて何も学習していないからです。キャッチやセービングの仕方、そしてキーパーは守護神というカッコいい役割があることをしっかり学んでいれば、少なくてもチームに一人くらいは「やってもいいよ」という子が出てくるはずです

ところが、ゴールキーパー学習を授業に取り入れたことのある先生は少数ですし、「痛い」、「怖い」といったイメージが先行しがちです。

そこで、痛みと恐怖心を取り除きながら、キャッチとセービングの技能をスモールステップで習得する指導法を紹介しました。一つひとつの動き方は学習ノートに載っているので、教師が見本を見せられなくても大丈夫です。

スモールステップによるゴールキーパーの学習方法(「体育の学習ノート」の一部)

初めてゴールキーパーの学習をするときは、グラウンドではなく体育館でマットを使うのがおすすめです。

参加していただいた先生方にも、さっそく体験していただきましたが、10分程度でダイビングキャッチにトライする方もいらっしゃいました。「意外とできる!」と感じるのは小学生も同じで、実際に授業をすると、クラスで数人は横っ飛びできるようになります。

キーパーセービングの練習をしている先生方。キャッチした後の倒れ方(受け身)を覚えれば、痛くないし、恐怖心も大きく減ります。

運動が苦手な児童が活躍できるようにする守備学習

サッカーは脚でボールを扱うので、球技の中でも特に難しいのです。だから運動が苦手な児童にとってはとてもハードルが高いです。だったらボールを触れることなく活躍できる方法を教えましょう。

それを可能にするのが「守備学習」です。一点取ることと同様に、一点取られないように防ぐことにも十分価値がありますから、「守り方」を教えることで、チームに貢献できるようになります

守備には様々な技能が必要ですが、その中でも以下の三つを覚えるだけで大きく変わります。

  1. シュートコースをふさぐ
  2. ドリブルコースをブロックする(前に進ませない)
  3. 体を入れてボールを奪う

ボールを保持している児童がサッカー上級者でない限り、守備の児童との対峙では守備の方が有利です。むやみに足を出さず、「ゴール前ではシュートコースをふさぐ」、「相手がシュートできない位置では体でドリブルコースをふさぐ」、この二つに専念していれば、そのうちボール保持者がミスをしてくれます。相手の足からボールが離れたときは、「ボールと相手の間に身体を入れて」奪いましょう。この動きは他の球技でも共通しますから、早い段階で習得しておきたいですね。

このように、ゴールキーパーを含めた守備学習で単元の序盤を構成することで、「キーパー誰やる?問題」や、「運動の苦手な児童の非積極性」を解消できる可能性が高まります

単元終盤は試合がしたい!リーグ戦を盛り上げる方法

研修会では、その後の単元の展開としてポジション学習やボール操作学習のコツ、サッカー単元で役立つ手作り教具についてもお伝えしましたが、本記事では割愛させていただき、単元終盤の締めくくり方をご紹介します。

球技単元は単元終盤に試合をすることが多いですが、ただ試合をして終わりでは面白くありません。クライマックス・イベントとしてリーグ戦を演出してあげましょう。おすすめの演出をいくつかご紹介します。

  • チーム名を児童に決めさせる(Aチームや1班といった名称では愛着がわかない)。
  • キャプテンマークや、キーパーグローブなどの用具をきちんと用意する。
  • 面倒でもコートのラインはきっちりと引く。
  • ルールをきちんと定め、フェアプレーを徹底させる。
  • 試合前の円陣やゴールパフォーマンスを積極的に行うにようにさせる。
  • 開会式と閉会式を行う(BGM、開会宣言、選手宣誓など)。
  • 閉会式で賞状(優勝チームや個人賞)を授与する。
参加された先生方にも、開会式を体験していただきました(チーム旗を掲げた選手宣誓)。

こうした演出をすることで、体育の授業でアスリート気分を味わうことができ、豊かなスポーツライフにつながるでしょう。


徐研究室では今後も現場に役立つ研修会や教材の提供を続けてまいります。参加いただいた先生方、大変お疲れさまでした!