保健授業における健康データの分析方法[第1回]Rによるデータアナリティクス(筑波大学附属駒場高等学校特別授業)
本日は東京大学進学率No.1で知られる超進学校の筑波大学附属駒場高等学校へ行って来ました。私もかつてこの学校で教員をしていたのですが、数年ぶりで懐かしい!
さて、その目的は保健の特別授業です。筑駒ではどの教科でも凝った授業が行われているのですが、受験教科ではない保健体育も例外ではなく、筑駒現職の岩田先生と徐研究室でコラボした保健授業の一部を、外部講師として担当させていただきました。

保健授業×データ分析が生まれた背景
特別授業のテーマは「保健授業における健康データの分析方法」です。「保健でデータ分析?どういうこと?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんので、簡単に背景をお伝えしておきます。
保健の授業って、生徒が学習内容をすでに知っている場合がよくあります。例えば「喫煙は身体に悪い」や「健康診断は大事」とか。なので、生徒の既存知識を超えるネタ(教材)を用意しておかないと、授業としては面白くならないのです。
「現代社会と健康」の「生活習慣病などの予防と回復」の単元もそのひとつです。「バランスの良い食事、適度な運動、十分な休養が健康にとって大切」なんてことは、普通の高校生なら知っています。
しかし、最近は偏食、運動不足・過多、睡眠不足が常態化している生徒も珍しくありません(特に「スマホで夜更かし」は結構な生徒が該当します)。その原因には家庭や社会的な背景が関係している場合があるので深くは触れませんが、それでも普通に学校に通い、部活や塾も頑張って、ほとんどはなんら不自由なく生活できているのです(中には心身の不調を訴えることもありますが)。
また、様々な調査や報告では、「朝食をしっかり食べている方が体力が高い」とか「スクリーンタイムが短い方が学力が高い」といった関係性が報じられています。でも中には「小食だけど運動がめっちゃ得意な生徒」や「ゲーマーだけどめっちゃ頭のいい生徒」がいるわけです。
つまり、理論と現実が一致していないケースがあるので、「ちょっとくらい寝不足続いたって平気だし」や、「食事とか運動とかって、若い時よりも中年以降の健康課題でしょ」って思っている生徒には、いくら教師が熱心に伝えたって、刺さらないのです。

そんな生徒を相手に納得できる授業を追求した結果、自分たちのデータを分析するという教材に行き着いたのです。
もしかしたら、筑駒という生徒集団には、一般とは違う健康上の傾向があるかもしれない。いやいや、逆に普通と同じかもしれない。どちらにしても、自分たちのデータでそれが分かったら納得できるでしょ、という発想です。専門的にデータを扱うので、保健×STEAMの一面もあります。
自分たちのデータをどう分析するか
私の役割は分析方法を生徒たちに教えてあげることでした。この単元で学ぶべき最低限の知識の学習とデータセットの構築は、あらかじめ共同研究(筑駒現職)の岩田先生にやっていただきました。
データセットというのは、この学年の生徒(自分のデータを授業で利用することに同意した生徒)たちの、睡眠・食事・運動・勉強・電子機器使用・健康に対する意識などをアンケートで聞いたデータと、この年の新体力テストのデータおよび直近の期末試験のデータをすべて紐づけたものです。
これを匿名化(どれが誰のか分からないように)して全生徒に配布し、少人数のグループを作って仮説を立て、統計的に分析して検証していくのです。
分析すると言っても、300を超える変数から成るデータセットですから、Excelでは時間内に終わりませんし、統計的な分析にも限界があります。そこでRを使うことにしました。Rは大学に進学しても使う機会があり、データサイエンスの分野ではPythonと並んで需要のある言語です。高校生でも今のうちに覚えておいて損はありません。
しかし、いくら筑駒生でも全員が最初からR言語をすらすらと習得できるわけではありません。そこで、当研究室でRの分析コードを事前に用意し、生徒は使いたい分析を選んで実行できるようにしました。
事前に用意された分析コード(R言語)
- データセットの構築
- 書式定義の適用
- ベクトルの処理
- 行列(マトリクス)の処理
- パッケージ関連の処理
- 基本統計量の算出
- 単相関分析
- 偏相関分析
- 重回帰分析
- 対応のないt検定
- 対応のない一元配置分散分析
- 決定木分析

R言語の基本的な使い方を教えた後は、「睡眠と期末テストの関係は?」や、「体調の良し悪しに最も影響するのはゲームの時間か、運動の時間か、それとも勉強の時間か?」といった、それぞれの仮説に基づいて分析を行いました。
筑駒生ならではの望ましい生活が見いだせたら面白いですね!
次回は分析の悩みや課題の相談(トラブルシューティング)に応じる時間です。それまでにしっかり分析してきてください!


